IR領域の英語習得|海外投資家向け英語表現・通訳を依頼する際のポイント

直接投資家の割合が低い日本でも、最近はNISAやiDecoの商品が浸透したこともあって個人投資が一般化してきました。同様に、世界中で間接金融から直接金融が盛んになる傾向が見られ、企業としてはこの機会を活用し、有効な企業イメージ作りをすることで資金を獲得するチャンスとなりました。そこで近年は、企業のイメージづくりや業績、財務状況をアピールするIR (Investment Relations) 活動が話題に上がるようになりました。今回の記事は、「IR活動における英語対応」がテーマです。

【IR情報】英語開示の実態と必要性

IRの具体的な活動には、ホームページ上での情報開示、各種説明会やミーティングの開催、工場や施設見学会、年次報告書や投資家向け広報誌の刊行などがあります。実際、IR優良企業は株価も高い場合が多く、市場で受け入れられていることが読み取れます。

ここ10年の海外投資家全体の年間売買代金総額が約80%の大幅な増加となっていること、今年に入ってからの日本株価の上昇が外国人投資家によることから、企業がIR情報を英語で開示するアドバンテージが高まっています。外国人投資家が日本企業の情報を求める時にまずアクセスするのが、英語版のIRサイト「IR Archive(IR資料)」や「IR Library(IRライブラリー)」だからです。東証が海外機関投資家に行った「英文開示を必要とする資料」を問う調査(2021年7月)によると、「有報の英文開示がない場合は投資しない」に、35%の回答を集めました。

しかし、2022年7月、東証が全上場会社(3,770社)に行った英文開示実施状況の調査によると、英文開示の実施率はプライム市場の上場会社で92.1%(1,692社)、全市場56.0%(2,113社)でした。

出典:英文開示実施状況調査集計レポート|東京証券取引所(2022.7)

2024年3月現在も、上場企業が決算情報を英文開示する義務はありません。しかし、東証はこれの義務化が2025年4月1日付けで適用になることを発表しました。海外投資家に判断材料を提供し、投資を呼び込むことが狙いです。

有報は上場企業に開示義務が課せられた資料ではありませんが、企業を知ろうとする投資家やアナリストが、もっとも信頼する第一級の資料です。

IR活動の一環として、IR専任部署を設けたり、会社ホームページにIR専用のサイトを開設する企業が増加しています。そういった企業は、体制を整える上で英語開示を担当できる人材の採用、または外部通訳を雇って翻訳・通訳を任せるという対応をしています。

英文開示の重要性と翻訳時の注意点を解説

通訳を依頼・雇用する際「伝えるべき情報と知識」

英語を担当できる人材を採用するにしても、派遣会社の通訳を活用するにしても、大事な自社のIRを担当させるのであれば、十分な知識を取得するための教育をしなくてはなりません。企業の基本的な情報を理解するだけでなく、投資についての最低限の理解も必要になります。

1. 機械翻訳の「校正」ではなく「翻訳」を依頼する

機械翻訳に頼らず、自社のIR情報のプレゼンの翻訳を通訳に依頼しましょう。
機会翻訳の「校正」を依頼すると、カタカナ文字の意味を理解しないまま英語にする危険があり、実際の質疑応答で必要な知識を得らない確率が増えます。一度しっかり翻訳した資料は、内容もよくわかり自信を持って通訳、またはプレゼンを担当することもできるので、本番で頼りになる通訳を育てるためには翻訳を依頼することがベストです。

2. 投資の基本的な用語を抑える

必要になる単語を上げるとキリがありませんが、投資用語を紹介する3社のサイトから頻出用語をまとめました。

株式 stock/share私はアップルの株を10株持っています。I have 10 shares of Apple stock.
利回り yield投資家は、株を評価する際に配当利回りをよく考慮します。Investors often consider the dividend yield when evaluating stocks.
収益 revenueその会社の収益は今年10%増加しました。The company’s revenue has increased by 10% this year.
利益 profit彼はその取引で500ドルの利益をあげました。He made a profit of five hundred dollars on the transaction. 
物価指数 stock index投資家は、広範な株価指数を通じて株市場のパフォーマンスをよく追跡します。Investors often track the performance of the stock market through a broad stock index.
債権 Bond多くの投資家は、政府債を安全で安定した投資と見なしています。Many investors consider government bonds to be a safe and stable investment. Japanese.
為替レート Exchange Rate国際取引を行う事業者は、通貨リスクを管理するために為替レートを注意深くモニタリングしています。Businesses that engage in international trade closely monitor the exchange rates to manage currency risk.
ポートフォリオPortfolio投資ポートフォリオを多様化することで、異なる資産クラスにリスクを分散させることができます。Diversifying your investment portfolio helps spread risk across different asset classes.
株主 shareholders株主とは、株式を所有している人や会社のことを指します。Stockholders are people and/or companies that own stock.
配当金dividend高配当の銘柄を探しています。I’m looking for a stock with a high dividend.
投資分野の頻出用語
北澤のじ

知らない分野について短時間で学び通訳をする場合、まずはひとつの言語で知識を得て、得た情報が書かれた文書を他言語で読んで理解できるかをクロスチェックします。翻訳機などを使うと「高い」がhighなのかtallなのか、またはexpensiveなのかということが正しく理解しにくいからです。もちろん日英の単語のみを勉強しておけば、自分の理解できない内容でもとりあえず通訳できるので、こちらの記事のような専門用語辞典も平行して利用し準備することがお勧めです。

3. 既に「英語で報告書を発行している日系会社」他社を参考にする

上記に挙げた「プライム市場」の多くが日英両方の報告書を発行しています。自社の業種を似た企業のものを取り上げ、読み比べると力が付きます。

業種ごとの検索はこのようなサイトから検索できます。

ファーストリテイリング(小売業)

IRライブラリー(日本語)(英語

カプコン(情報・通信業)

IR資料室(日本語)(英語

東京海上ホールディングス(保険)

IRニュース(日本語)(英語

4. 投資家の興味のある分野について教育する

経済や投資について長い経験を持つ皆さんは、「投資を理解するための基本的な知識を取得するためのトレーニング」と言われても、複雑すぎて何を教えたら良いかわからない、となるかもしれませんが、あくまでベーシックだけを抑え以下のような知識を英語で説明できるようになるよう訓練をすると実践力が上がります。

財務力に関する知識

EPS (Ernings Per Share)「1株当たり純利益」=企業を評価する際に使われる指標のひとつで、1株当たりの利益がどれだけあるのかを示すもの。
PER (Price Earnings Ratio)「株価収益率」=株価がEPSの何倍の価値になっているかを示すもの。
PBR (Price Book-value Ratio)「株価純資産倍率」=企業の資産内容や財務状態をもとに株価水準を測る指標のこと。
BPS (Book-value Per Share)「1株当たり純資産」=企業の安定性も高いと評価するものさし。
参考:三菱UFJモルガン・スタンレー証券
PL (Profit Loss Statement)損益計算書
BS (Balance Sheet)貸借対照表
Cash Flowキャッシュフロー計算書
参考:財務諸表とは?経営者が知っておきたい財務三表の読み方|三井住友カード
北澤のじ

通訳をする時は、2言語の単語を対訳できれば良いというものではなく、ベースとなる知識がなければ質問・回答を理解して正確に訳すことが難しくなります。上記のコンセプト、仕組みが理解できていれば投資家の立場に立って考えることができるので、聞こえた通りに訳して見当違いのことを言ってしまう、というトラブルは避けることができるでしょう。

【IR質疑応答に備えて】株主の質問トレンドを押さえよう

投資のトレンドとなっているトピックについて、自社の方針を理解しておくことも有益です。企業としての回答を用意しておき、それを前もって訳しておけば必要になる単語についても準備しておくことができます。株主の質問には、以下のようなトレンドがあります。

海外での売り上げ計画 (Outbound sales plans) 

多様性理解による雇用の確保 (Securing resources through understanding Diversity and Inclusive) 

DX推進による収益拡大 (Increase profit by promoting DX) 

AIの活用による効率化 (Imoroving efficiency through the use of AI) 

ITセキュリティ対策 (IT security measures) 

CO2排出削減目標 (CO2 emission reduction target) 

ROE向上のための取り組み (Initiatives to improve ROE) 

IR翻訳は正確性とリスクの回避が大事|依頼する翻訳者の選び方を解説

まとめ

通訳・翻訳者が自社の情報について学ぶこと、投資に関する最低限の情報と仕組みを理解すること、そしてトレンドに関する企業について事前に理解しておくことから、会社がグローバルに活躍する足掛かりができそうです。日本の投資家とは違った目線を持つ人からの資産獲得のチャンスが大きくなりますよね。英語を通してグローバル化を達成させ、企業も人も成長できる機会となるように、応援しています。

英語コミュニケーションに「OCiETe(オシエテ)」

Click me

多言語コミュニケーションにお悩みでしたら、プロの通訳に任せるのも一つの手段です。

誠意を込めた謝罪をしたいとき、トラブルの過程を説明する必要があるシーンなど、特に正確性が求められる場合は、機械翻訳に頼らずプロの通訳・翻訳会社に依頼しましょう。

OCiETeではオンライン通訳や現地通訳サービスで、言語コミュニケーション課題をサポートいたします。

現地のアテンドや商談時の通訳、会社案内や契約書の翻訳、さらに即戦力人材のご紹介や海外進出に向けた事前リサーチや営業代行も承ります。

コーディネーターが、業界や商品・サービスごとに精通した担当者をシーンや用途に合わせ、ご案内いたします。お気軽にお問い合わせください。

通訳のお見積り依頼はこちら▷

通訳・翻訳に関するご相談
資料請求・お見積りの問合せ(03-6868-8786/平日10時~19時)

ABOUT US
北澤のじ
歴史と文化と自由に興味を持ち、ヨガとキャンプとお酒を愛するDigital Nomad。通年20年、50か国以上での海外経験があり、南アフリカの市場調査、フリーランス通訳、英語塾経営を通して日本企業の海外進出、日本のグローバル化を応援しています。 通訳としては、社内通訳7年、フリーランス通訳8年の経験があります。20代にバックパッカーで世界を旅行していたら英語脳が作られ、大企業で同時通訳をさせてもらえるようになりました。アフリカ英語塾の塾長としてアフリカの講師と一緒に英語を教え、誰でも英語が喋れるようになることを伝えています。