製造効率をアップさせるには?|MESを導入してDX化させる方法をわかりやすく解説

製造効率をアップさせるには?|MESを導入してDX化させる方法をわかりやすく解説

製造ラインDX化に欠かせない、「MES」はご存知ですか?

MESはManufacturing Execution System、「製造実行システム」の略です。

簡単に言うと「生産管理システム」、つまり製造現場で利用される材料や人員の流れを追跡し、プログラムされた標準に基づいて生産工程を管理し、そのデータを一元的に活用、保存するシステムです。

MESは生産活動に関するリアルタイムの情報を提供し、企業がプロセスを効果的に監視、制御、最適化できるようにします。つまりMESを使えば、現地にいなくても海外の製造現場を管理できるということです。

MES導入は製造業にとってどう役立つ?

MES (=生産管理システム) はERP (Enterprise Resources Planning=実務管理システム)とも連携させることができるため、工場内の管理だけでなく発注や会計業務とも連結することができます。 さらに、サプライヤーや販売業者の基幹システムとも連携すると、原材料の発注から到着、製品の発送から販売までを一部始終をリアルタイムで管理することができます。製造工場に入って来た材料がお客様のところへ届くまでのもの・情報・お金の流れと関わった人を全てできるようにするシステムがMESです。

ITやAIが進化したこの世の中では当然、急速に導入されている技術かのように感じますが、実際は製造業でMESの導入は進んでいません。以下は、2021年に野村総合研究所がMESの導入状況を調査した結果です。製造業者163名のうち、利用していると回答した方は約35%の57名だけでした。そのうち、制御と管理どちらにも活用していると回答した方は半分以下です。

出典:令和3年度省エネルギー等に関する国際標準の獲得・普及促進事業委託費

下記は、同調査による「MESが導入されていない理由」の回答です。経営層に広く理解されていない、投資対効果が説明できないと答えた企業は94%にも上ります。

出典:令和3年度省エネルギー等に関する国際標準の獲得・普及促進事業委託費

MESの導入を説得するためのキーワード

MESが製造現場でどのような価値を与えるのか、製造の軸となるコンセプトに基づいて整理し、そのキーワードとなる英単語を学んでいきましょう。自社でMESを導入する場合、どの部分を改善したいかを現地経営陣やベンダーに説明する際に役立つ英単語です。

北澤のじ

筆者は、製造業での通訳、製造ラインMESの導入プロジェクト、またMESシステムを開発・導入するIT会社での通訳の経験があります。MESの導入により各種管理が目から鱗が落ちるような効率化が実現できる可能性がありますので、この記事を読んでいただいている皆さんのお役に立てると嬉しいです。

自働化/Autonomation

自動化(Automation)に対して、いわゆる「にんべんのついた自働化」はAutonomationと言います。MESシステムは自動的にデータ収集、生成、送信をすることができるので大幅な効率化を図ることができますが、承認プロセスを自由に設計できるため「自働化」を実現することができます。人が介入して承認するまでものの流れを停止する、または不具合や危険を発見した場合は製造を止める指示を出すことができます。

自働化 automation
リアルタイム real-time
可視性 visualisation
制御 control
最適化 optimisation
流れ flow
不具合 defect
危険 risk, danger

トレーサビリティ/Traceability

Trace (追跡する) + Ability (能力がある) で「追跡可能性」と訳されます。これは、製造工場に入って来た材料が工場を出るまで追跡して情報を収集できる能力を指します。Genealogyも同じ意味で使われますが、こちらは「系図」という意味で、家族の系図のイメージです。これは、製造メーカーに対する法的要件になりますので、どの製造業でも必要な情報です。 MESは、製品の製造に必要なすべての材料、構成部品、組み立て部品の数量や加工に関するまとめた包括的なリスト(BOM)を自動的に生成します。MES は、到着時または処理時にバーコードまたは QR コードをスキャンして登録システムを自動化し、企業の規制遵守を実現します。

トレーサビリティ traceability
追跡 tracking
系図 genealogy
法的要件 legal requirements
起源 origin
到着日 arrival date
処理日 processed date
出荷日 shipping date
規制 regulations
遵守 compliance
部品表 (BOM) Bill Of Materials

ジャストインタイム/Just in time

各工程、各ラインでシステムによって計測された実際の消費量に基づいて部品の発注をし、後工程引き取りの流れを作ることができます。物流のリードタイムや在庫数などのルールも加味した上で発注数を決めることができるので、生産管理の実務が効率化されます。指示がMESからERPへ伝達され、自動的にPOを発行してサプライヤーへ発信させることもできます。

消費量 Consumption
物流 logistics
リードタイム lead-time
在庫数 stock count, number of stock
手持ち buffer
後工程引き取り pull-system

在庫のムダ/Muda of inventory

製造工場にある材料、原材料、仕掛品 (WIP)、完成品の数量をデータで一元管理することができます。MESが倉庫の所番地にもバーコード・QRコードを導入して棚入れの時にスキャン登録できるようにすると、在庫の棚の場所まで特定できるようになります。小売業でも類似した管理機能を利用している所が最近増えました。全国展開のお店であれば、他県のどの店舗で探している品物が購入できるかを検索し、あなたのいるお店にその商品を取り寄せて販売するというサービスが近年一般的になりました。

在庫 Inventory, stock
原材料 raw material, materials
仕掛け品 WIP (Work-In-Progress)
完成品 Finished goods, complete products
所番地 Address
入荷 receiving
棚入れ allocation
棚出し picking
棚卸し stock-take
梱包 packing

標準化/Standardisation

製造工程、人員配置、品質管理基準などすべての基準をシステムに落とし込むことができるので、標準が守られるように制約がされ、管理者の業務の一部をシステムが担うことができるようになります。

標準作業 standardized work
人員配置 resource allocation
品質基準 quality standard
サイクルタイム cycle time
工程観察 Process observation

生産性向上/Productivity improvement

記録作業が自動化されることで、情報の伝達が同時かつ正確になります。 部品欠品や保全作業によるライン停止時間を分類ごとに記録したり、品質問題の集計と製造ラインの状況をクロスチェックすることが効率よくできるようになります。達成したい評価指標に基づいてパフォーマンス評価をできると、現場監督者、経営者にとってビジネスの方向性を決めることが容易になります。

目標 Target
実績 Performance
品質保証 Quality assurance
検査 Inspections
稼働率 OPR
直行率 SDR
評価指標 KPI
停止時間 Downtime
設備稼働時間 Equipment uptime
改善 Kaizen, Continuous improvement

MES導入のやり方

MESを導入するためにはまず、製品のインターフェースやベンダーの得意分野などから、依頼書を送りたいベンダーを選定します。現状と達成したいゴールを明記した依頼書を作成してベンダーに送り、回答をもらって比較します。

ここまではERP要件書作成と同じですが、自社の製造業が車なのか、製薬なのか、食品なのかによって製造ラインのデザイン、法律や品質の検査が変わるので、同業界の経験があるベンダーを選ぶことがベストです

また、自社の製造工程が複雑なほど、経験のあるベンダーを選ぶことが必要になります。それは、例えばラインの増設を続けている会社では使用する設備に使っている全ての制御システム(SACADA、PLCなど)や外部システムと統合必要があるからです。そういった既存のシステム、を説明する際のキーワード、英語訳を見ていきましょう。

MES要件書の作成方法

MESの導入に当たって下記の事項をまとめていきます。特に5つ目「現状の製造システム」についてどれだけよく調査し、正確な状況をベンダーに伝えられるかがプロジェクトにかかる予算と時間を正確に知るための鍵となります。

1. イントロダクション (Introduction)

  • 会社概要 (Business overview) 
  • 業種 (Industry)
  • 生産量、種類 (Production volume, variations) 
  • 製造工程の概要 (The outline of production processes)

2.現状のチャレンジ (The current challenges)

  • ボトルネックとなる不都合や不具合 (The bottleneck inconveniences and problems) 
  • 具体的な事象 (Actual events) 

3.ビジネスが目標とする姿 (The business objectives)

  • 新たなITソリューションの導入によって達成したいこと (The objectives to achieve by implementing new IT solutions) 
  • ビジネス要件(機能や能力を含む)(Business requirements including functionalities and capabilities) 

4.製造工程の詳細 (The details of production processes)

  • 工程とものの流れ (Processes flow)
  • 品質確認の場所と方法 (Quality gates and method)
  • 安全とコンプライアンス Security and Compliance Requirements

5.現状の製造システム(Current manufacturing system)

  • 既存のシステム Legacy Systems
  • 外部システムとの統合 Integration with External Systems
  • 依存関係 dependencies
  • 技術スタック Technology Stack
  • データの格納場所 Location of Data
  • データ量と増減 Data Volume and Growth

6.スケジュールと予算 (Timeline and budget)

  • 主要なマイルストーン (major milestones) 
  • 期限 (Timeline) 
  • ITソリューションと実装サービスの予算 (Budget for IT solutions and implementations)

まとめ

MESを導入する利点と導入に向けて必要となる英語をご紹介させていただきました。冒頭に申し上げたように、投資対利益を明確に証明できないという点があることが難点という声があるようですが、この記事を読んで自社の工程の効率化や作業時間削減のアイデアを得て、英語で自信を持って説明ができるようになることを願っております。DX化、より効率よくスマートな製造ラインの実現に向けて頑張ってください!そして、「ご安全に」!

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北澤のじ
歴史と文化と自由に興味を持ち、ヨガとキャンプとお酒を愛するDigital Nomad。通年20年、50か国以上での海外経験があり、南アフリカの市場調査、フリーランス通訳、英語塾経営を通して日本企業の海外進出、日本のグローバル化を応援しています。 通訳としては、社内通訳7年、フリーランス通訳8年の経験があります。20代にバックパッカーで世界を旅行していたら英語脳が作られ、大企業で同時通訳をさせてもらえるようになりました。アフリカ英語塾の塾長としてアフリカの講師と一緒に英語を教え、誰でも英語が喋れるようになることを伝えています。