【著作権法解説】翻訳物の著作権は誰に帰属?二次的著作物の契約条項と雛形

翻訳物に関する著作権について解説!依頼時のトラブルを回避するためには

「発注した翻訳物の著作権は誰に帰属するのか?」

この疑問は、翻訳事業に関わる企業担当者様、そしてフリーランスの翻訳者様にとって、常に曖昧さが残る大きな課題です。特に、翻訳物をウェブサイトや製品など二次利用する際、「二次的著作物の権利」を巡って、予期せぬ契約トラブルに発展するケースは少なくありません。

本記事は、著作権法の定義と実務上の契約の観点から、翻訳物の著作権が誰に帰属するのかを徹底的に解説します。

この記事を最後までお読みいただくことで、曖昧になりがちな翻訳契約における著作権の取り扱いを明確にし、二次的著作物に関する法的トラブルを未然に防げるようになります。契約実務に役立つ具体的な条項の雛形までご紹介しますので、ぜひご活用ください。

この記事を読めば、依頼する前に、翻訳物の著作権問題・翻訳文の取り扱いに関する不安や疑問を解消し安心して依頼を進めることができます。ぜひ最後までご覧ください。

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著作権法が定める「二次的著作物」の定義と効果

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翻訳物の著作権の所在として、写真や論文、本、オンライン上にあるものでも、著作物として該当するものは、すべて保護する権利があるため著作権が認められます。

その中で著作物を翻訳する場合、基本的に翻訳者もコンテンツの著作権を持つというのが一般的なルールです。

つまり、翻訳文の変更や、後の作品での翻訳文の使用は、翻訳者の承認を得ない限り遂行することはできません。

翻訳会社が作成した翻訳は「二次的著作物」

翻訳会社が作成した翻訳は、”二次的著作物 “とされ、原著作物の著作権に加え、翻訳物そのものにも著作権が発生します。

二次的著作物とは?
二次的著作物とは

参照:著作権法:二次的著作物の利用|月間総務

つまり、原著作物の著作権は翻訳文に移行し、翻訳文に変更を加えたり、翻訳文を利用しようとする場合、まず原著作物の著作権者の許諾を得る必要があります。

著作権は翻訳を依頼した個人または組織に譲渡することができるため、翻訳を依頼する際に著作権譲渡および著作者人格権を行使しないとの約束を得ている状態であれば、著作物に関する著作権は依頼主(企業)にあるということになります。

翻訳物の著作権は誰に帰属する?(翻訳者、発注者、原著作者の関係)

翻訳を依頼する際、著作権問題のトラブルを回避するために、3つのポイントに注意しておきましょう。

著作権トラブルを回避するためのポイント
  • 翻訳物の著作権の所在(帰属先)を明確にする
  • 翻訳実施から納品までのルールを詳細に明記する
  • 安心できる翻訳者・翻訳会社に依頼する

著作権・著作権法は複雑なルールがあり、この問題を解決するには簡単なリサーチだけではまかなえきれません。

事前に注意点を把握しておくこと、翻訳物のクオリティはもちろん、著作権に関するサポートをしてくれる翻訳者・翻訳会社への依頼をすることにより、不安を解消することができます。

翻訳物の著作権の所在(帰属先)を明確にする

翻訳を依頼する前に、翻訳物の著作権について事前に確認しておくことがベストです。この記事でもお伝えしている通り、翻訳会社によって著作権の譲渡(放棄)を宣言してくれる会社もあります。

後になってトラブルを招かぬように、翻訳物(二次的著作物)も帰属・譲渡をしてくれるかをしっかりと確認しておきましょう。

翻訳実施から納品までのルールを詳細に明記する

問い合わせ・見積もりの時に、著作権について確認したからといって、そのまま依頼することはおすすめしません。

翻訳に関するルール、ローカライズによる軽微なアレンジなど、細かなルールまで契約書等に明記しておくことが重要です。

安心できる翻訳者・翻訳会社に依頼する

英語ができる、中国語ができるなど、翻訳したい言語の知識があるからといって安易に依頼することは注意すべきです。

翻訳スキルがあっても細かなルールまで把握していなければ、大きなトラブルに繋がりかねません。

著作権法に詳しい翻訳者・翻訳会社に依頼することによって、誤訳のない高品質の翻訳を施してくれるだけではなく、法律的な面でも安心することができます。

トラブルを回避する!著作権の譲渡・利用許諾契約で押さえるべき重要ポイント

翻訳物の著作権の帰属が理解できたら、次に重要なのは、その権利関係を明確にする契約です。この契約が曖昧だと、将来的な二次利用や改変の際に高額な追加費用や訴訟リスクが発生しかねません。

翻訳依頼時(または受注時)に締結する契約書では、以下の3つのポイントを必ず押さえてください。

譲渡・許諾する「権利の範囲」と「利用目的」を明確にする

著作権のトラブルの多くは、「翻訳物の利用目的と範囲が曖昧だった」ことに起因します。

特に翻訳物をウェブサイト掲載以外にも、パンフレットや動画など多岐にわたって利用する可能性がある場合は、契約書で詳細に定める必要があります。

確認すべきポイント具体的な記載例
利用媒体翻訳物を「ウェブサイト」「社内報」「製品カタログ」など、どの媒体で利用するかを特定する。
利用期間期限を設けるか(例:契約締結後5年間)、無期限とするかを明記する。
利用地域日本国内のみか、海外での利用も想定するかを明確にする。
対価の明記当初提示した翻訳料が、「これらの二次利用権の対価を全て含む」ことを明確にする。

「二次的著作物の創作・利用権」をどちらが持つかを定める

二次的著作物とは、既存の著作物(原文)に依拠しつつ、新たな創作性を加えて作成されたもの(翻訳物)です。この二次的著作物をさらに改変したり、別の利用に供したりする権利をどちらが保有するかを定めます。

  • 発注者側として: 翻訳物を後々改変する可能性がある場合や、複数の媒体で自由に利用したい場合は、翻訳者から「二次的著作物の利用に関する権利」を完全に譲渡してもらう必要があります。
  • 翻訳者側として: 著作権を保持したい場合は、利用許諾の範囲を限定し、範囲外の利用には別途許諾料が発生する旨を明記しましょう。

著作者人格権の「不行使特約」を必ず設ける

著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権など)は、著作権の譲渡後も翻訳者(著作者)に残り続ける権利であり、契約で譲渡することはできません。

しかし、この権利によって、発注者が翻訳物を軽微に修正・改変した際に、翻訳者から「同一性保持権の侵害だ」とクレームが入る可能性があります。

これを回避するために、契約書には必ず以下の「著作者人格権の不行使特約」を設けてください。

翻訳者は、発注者または発注者の指定する第三者に対し、本翻訳物の利用に関し、著作者人格権(同一性保持権、氏名表示権等)を行使しないものとする。

この一文があるだけで、発注者は安心して翻訳物を修正・二次利用できるようになり、翻訳者も権利を放棄するわけではないため、契約が円滑に進みやすくなります。

【実務向け】契約書に記載すべき著作権条項の雛形

前章で解説した重要ポイントを踏まえ、翻訳依頼における著作権の取り扱いは、主に以下の2パターンに分けられます。

自社の目的に合わせて適切な条項を選択し、契約書に組み込んでください。

雛形1:著作権を発注者へ完全に譲渡する場合(最も一般的)

翻訳物を社内資料やウェブサイトなど、発注者が自由かつ無制限に利用・改変したい場合に採用します。この場合、翻訳者は著作権を失います。

項目契約条項の雛形解説
著作権の譲渡翻訳者は、本翻訳物に関する著作権(著作権法第27条及び第28条に定める権利を含む。)を、本契約締結時に対価をもって発注者に無償かつ独占的に譲渡するものとする。第27条(翻訳権・翻案権)と第28条(二次的著作物の利用に関する権利)**を含めることを明記することで、発注者の二次利用の権利を完全に確保する。
著作者人格権の不行使翻訳者は、発注者または発注者の指定する第三者に対し、本翻訳物の利用に関し、著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権等)を行使しないものとする。著作権が譲渡されても翻訳者に残る人格権について、発注者側の利用の妨げにならないよう、予め不行使の特約を設ける。

雛形2:著作権は翻訳者に留保し、利用を許諾する場合

発注者が翻訳物を限定的な用途でのみ利用し、その後の利用や改変の予定がない場合に採用されます。

この場合、発注者が許諾範囲を超えて利用すると、別途費用が発生する可能性があります。

項目契約条項の雛形解説
著作権の帰属本翻訳物の著作権(著作権法第27条及び第28条に定める権利を含む。)は、翻訳者に留保されるものとする。翻訳者が権利を持ち続けることを明確にする。
利用の許諾翻訳者は、発注者に対し、本契約の翻訳料金の支払いと引き換えに、本翻訳物を以下の【利用目的】に基づき、無期限かつ無償で利用することを許諾する。契約書内で定めた【利用目的】(例:社内研修用資料への掲載)に限定して利用を許諾する。利用目的と期間の記載は必須。
許諾範囲外の利用発注者が、上記【利用目的】の範囲を超えて本翻訳物を利用する場合、発注者は事前に翻訳者の書面による許諾を得た上で、別途定める許諾料を支払うものとする。制限を設けることで、発注者の無制限な二次利用を防ぎ、翻訳者の権利を守る。

専門家からの注意点

これらの雛形は一般的なものであり、個別の案件や国境を越えた取引には適用できない場合があります。特に多額の報酬が発生する、あるいは国際的な利用が想定される案件については、必ず弁護士などの専門家に契約書の内容確認を依頼してください。

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著作権に関する翻訳まとめ

この記事では、翻訳物の著作権問題について解説しました。ここでのポイントは以下の通りです。

ここがポイント!
  • 翻訳物にも著作権利が存在する
  • 翻訳物の著作権の所在(帰属先)を明確にする
  • 翻訳を依頼する際は著作権に関するサポートをしてくれる翻訳会社に依頼すべき

重要な文書・コンテンツを翻訳する場合は「著作権」といった注意点が付きものです。

この記事でもお伝えした通り、単に言語スキルがあるからといって安易に依頼することは危険です。

OCiETeでは、翻訳サービスだけではなく著作権など、依頼企業様が不安に思うことを解決するサポート体制を整えています。

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この記事の監修者
河野冬樹

河野冬樹

第一東京弁護士会所属。
法律事務所ある支援パートナー弁護士。
著作権関係を専門とし、多くのクリエイターやコンテンツ制作会社の顧問を務める。

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Sano
翻訳・通訳サービスを展開するOCiETeでマーケティングを担当。「世界をシームレスにつなげる」の企業理念のもと、海外企業や外国人とのビジネスに必要な翻訳者・通訳者とのマッチング支援行っています。 翻訳・通訳依頼の基礎知識だけではなく、依頼前に知ってほしいポイントを伝えることをモットーに、情報発信しております。 また海外ビジネスに関するWebメディア「セカイノビジネス presented by オシエテ」の運営も兼務。