エチオピアに足を踏み入れるまでは、エチオピアがどんな国なのか想像がつきませんでした。それもそのはず、エチオピアでは80以上の言語が話され、エジプト、インド、アラブ、ギリシア、ローマ、ペルシャ(現在のイラン)の影響を受けながら2000年以上かけて発展した歴史の深い国なのです。この記事では足で旅し、現地の人たちと話して初めて知った事実をこの記事にまとめました。

エチオピア基本情報
エチオピアと言えば、「コーヒーの産地」。コーヒー豆を煎って煮出して飲む、今や全世界のトレンドとも言える習慣は、ここから生まれたと言われています。その他にはどんな文化、歴史、経済状況、ビジネスチャンスがあるのでしょうか。
ネットで調べると「貧困国」、「劣悪なトイレ事情」、「水と電気不足」、「内戦で不安全」…などとネガティブな記事が目立ち、足を踏み入れられない場所のように感じます。しかし一度訪れてみると、アジア人にも似た穏やかで細やかな国民性、豊かな歴史と文化、壮大な自然を持つ魅力に溢れる国ということが分かりました。

ワールド・ビジョン・ジャパン「3分でわかるエチオピア~エチオピアって、どんな国?」(2025年3月26日)

どれだけご存じですか?エチオピア情報TOP10
ここからはエチオピアがどのような国かより深く知ることができる、10個の情報を厳選してご紹介していきます。

エチオピアは世界で最も古い文明を持つ国の一つで、紀元前からの歴史がある。
世界最古の文明と言えば、メソポタミア文明(紀元前約4100年頃~1750年)、エジプト文明(紀元前約3000年頃~30年)ですが、この2つの文明の近くに位置するエチオピアでも、紀元前から栄えた文明がありました。また、世界最古の人間化石であるLucyはエチオピア付近で発見されており、約5000年前からその土地に人類が存在し、古代文明が発展したという説が有力です。
紀元1世紀にエチオピア北東部で興隆したアクスム王国は、紅海沿岸の主要交易路を支配し、アラブ、インド、中国、ローマを相手に金、象牙、香料の輸出を基盤とした繁栄した経済で知られていました。巨大な洗練された建築物を含む先進的な都市社会と、金、銀、青銅で鋳造された貨幣制度でも有名でした。王国の名前「アクスム (Aksum)」は、現在も同名でエチオピアの都市として同じ場所に存在します。
ナイル河の源はエチオピアにある
「エジプトはナイルのたまもの」と言われるほど、エジプト文明の繁栄に欠かせないものでした。実はそのナイル河の8割以上である主流の青ナイル河は、エチオピア北西部にあるタナ湖を源とします。エジプトの生活を支える水は今もエチオピアから流れています。ウガンダのビクトリア湖から流れる河は白ナイルと呼ばれ、スーダンで青ナイル河と合流してエジプトへと流れます。
現在もエジプト国民は殆どの水源をナイル河に頼っており、この水源はまさに命の水。エチオピア、エジプト、そしてエジプトと同じく命をナイル河に委ねるスーダンの3カ国は、ナイル河の権利を共有する協定を結んでいます。しかし、エチオピアは国内で不足する電力を補うための政策として、グランドエチオピアンルネッサンスダム(GERD)を2011年から2023年にかけて建築し、ナイル河の水でダムを満たしました。長さ30㎞、深さ152mでアフリカ最大の水力発電所は、エジプトとスーダンの国民の命を脅かすものとして3カ国間での緊張が続いています。
エチオピアでは、80以上の言語が話されている。
長い歴史を持つエチオピアでは多様な言語が話されています。エチオピアにある12の州のうちの一つである南部諸民族州(Southern Nations, Nationalities, and People’s Region: SNNPR)、だけでも56言語、国全体では推定86言語が話されています。公用言語はアムハラ語のみでしたが、2020年2月にはアムハラ語に加え、オロモ語、ティグリニャ語、ソマリ語、アファール語が連邦政府公用語リストに追加されました。
公用語に追加された言語は人口の多い州、または言語グループで見た時に話者の多い言語になっています。しかし、殆どの国民が話すことができるのは以前から公用語として認識されているアムハラ語です。
ローマ字ではなく独自の文字「アムハラ文字」を使っている。
アムハラ文字は、今は話されていない「ゲエズ語 (Ge’ez)」という言葉に依ります。ゲエズ語は現在エチオピアとエリトリアのある地域で発展した言語で、最古の記録はエザナストーンと呼ばれる石碑に刻まれたものです。エザナストーンはアクスム王国で4世紀頃に作られたと言われており、ゲエズ語、ギリシア語、サバ語(古代南アラビア語のひとつ)で書かれています。
エザナストーンが作られた当時から、ゲエズ語は宗教的な思想を記録する言語として使われており、聖書やゴスペルの詩を書くために使われていました。ゲエズ語はその後もエチオピアで発展し続け、アムハラ語として14世紀にエチオピアの公用語に。アムハラ語はアラビア語に次いで世界で2番目に多く話されているセム語族であり、エチオピアでは3,000万人以上、世界中で2,500万人以上に話されています。
エチオピアは歴史上、一度も植民地化されたことがない
アフリカにある54カ国のうち、一度も植民地化されたことがないのはたった2国、エチオピアとリベリアだけ。欧州から近く文明の発展したエチオピア北部にイタリアが攻め入り、1936年から1941年にかけてエチオピア北部地域を占領しました。しかしアクスム王国に住むティグレイ人がイタリア軍と戦い、自由を取り戻しました。
今もティグレイの人々は「自分たちがこの国のために戦い勝利を得た」という誇りを持って歴史を語ります。また、ディグレイ語の72%がゲエズ語を起源としていることで、ティグレイ人が古くからこの土地の住民であることが見られます。
アフリカで最も多くの世界遺産認定を持っている
エチオピアで世界遺産認定されているのは12か所、南アフリカと並んでアフリカのトップを占めます。
- シミエン国立公園 (1978)
- ラリベラの岩窟教会群 (1978)
- ファジル・ゲビ、ゴンダール地域 (1979)
- アクスム (1980)
- アワッシュ川下流域 (1980)
- オモ川下流域 (1980)
- ティヤ (1980)
- ハラール・ジャゴル要塞歴史都市 (2006)
- コンソの文化的景観 (2011)
- Bale Mountains National Park (2023)
- The Gedeo Cultural Landscape (2023)
- Melka Kunture and Balchit: Archaeological and Palaeontological Sites in the Highland Area of Ethiopia (2024)
エチオピアは内戦や周辺国との戦争が頻繁に起こるので外務省の安全情報では「レベル2、渡航には注意して下さい」となっていますが(2025年5月現在)、意外に旅行のしやすい国。首都のアディス・アベバから各名所に飛ぶ国内線フライトがあり、短期間で多くの世界遺産を巡ることができます。英語のガイドツアーも充実しているので、観光名所は比較的安全と言われています。
独自のキリスト教「エチオピア正教会」を信仰している
エチオピアにキリスト教が伝わったのは4世紀頃、前述のエザナ王によって紹介されました。信者は国民全体の43.1%と国内で一番多く、次にイスラム教(34.1%)、プロテスタント(19.4%)が続きます。

ゲラルタ岩窟教会群にある教会は、岩の洞窟を手で掘って作られたと言われています。有名なアブーナ・イェマタ教会は4世紀に作られ、ゲラルタ地域にある120の教会の中で最も古いものの一つです。高さ720mの場所にあるその教会では今も毎週日曜日にミサが行われており、お年寄りも他の参拝者の力を借りながら10mの断崖絶壁を含める登山をするところを見ました。
エチオピア正教の信者は年間180日の絶食をする。
「体を懲らしめて従わせる」というエチオピア正教の経典の教えに従い、信者は年間180日~252日間の絶食をすることになっています。「絶食」の解釈は宗教によって様々。エチオピアの場合は、肉を食べないことを主に意味します。さらに、人によっては15時まで食事を摂らない、お酒を飲まない、などの制約も追加されます。
イースターの前は55日、クリスマスの前には43日の絶食をし、その両日のお祝いとして好きなものを家族と一緒に食べて普段の食事に感謝をするという習慣を持っています。更に一年を通して水曜日と日曜日は肉や卵を食べないという習慣もあります。絶食の時は首都以外のほとんどの地域でお肉を買ったり、レストランで肉を注文することができません。

グレゴリオ暦を使っていないので、今は『エチオピア年』の2018年である。
古代コプト暦に基づくエチオピア暦(ゲエズ暦とも呼ばれる)は、イエスの誕生の告知の日付を決定する際に異なる計算法が用いられているため、エチオピア暦はグレゴリオ暦より約7年遅れています。それは、エチオピア正教会の伝統的な解釈に基づき、受胎告知をグレゴリオ暦より7~8年早いものとしているためです。そのため、クリスマスも1月7日、新年は9月11日です。
GMT標準時間を使っていなく、10時と書いて4時と読む。
エチオピアが赤道に近いため、年間を通して日照時間が一定です。夜明けである6時を0時とし、日が沈む18時を0時とする12時間制を使います。
しかし携帯電話、壁時計の表示はGMT標準時間と一緒。エチオピア人は携帯スクリーンの時計「10時」を見ながら「今は4時」と言います。エチオピア人と待ち合わせをする時は、気を付けて下さい!
まとめ
多様な文化に影響されたエチオピアの複雑な歴史背景を見ていただけたでしょうか。インフラが整備されていない地域ではその慎ましい生活、その中で生まれた生活の知恵についても学ぶことが多くありました。JETROの調査によると、2025年4月の時点でエチオピアに進出している日本企業は全13社。まじめで温和なエチオピア人は日本人の気質と似ているところがあり、他のアフリカ諸国にはないアドバンテージがありそうです。

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ちなみに、国全体の英語普及率はあまり高くはありません。首都のアディス・アベバのタクシーやレストランで英語が通じるは50%くらいの確立でした。