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日本人が英語の聞き間違いをする理由は幾つもありますが、以下の代表的な例があります。
- 「単語は母音で終わる」と脳にプログラムされている。I won’tをI want to と聞き取ってしまう。
- 英語には5種類の”a”の発音があるが、日本語は1つしかないので聞き取りが難しい。
- 文章になると、単語が単独で発音される場合と異なるために違期待している発音と違って話される。
この仕組みを理解し、聞いた言葉をもう一度考えてみるだけでもリスニングの問題を改善することができます。ここでは更に、頻繁に聞き間違える文章や単語について見て行きましょう。

CanとCan’tの聞き分けのコツ
イギリス英語とアメリカ英語で、明確に違う発音です。
イギリス発音では、この聞き分けはそれほど難しくありません。”a”の音が別々の音で発音されるからです。aの聞き分けに慣れていない英語初心者でも、否定形では、”aa”と母音が長く発音されるので、より聞き取りが簡単です。
can | can’t | |
---|---|---|
イギリス発音 | kæn | kɑːnt |
アメリカ発音 | kæn, kən, kin, k’n | kən (t) |
アメリカ発音の聞き分け
広い国土のアメリカには約30ものアクセントがあると言われ、canの発音も様々。その中には”t”を発音しない場合もあるので「できる」と「できない」が全く同じく発音される場合があるのです。
では、どうやって聞き分けるのでしょうか?それは、「どの言葉を強調するか」に注目することです。
I can do it. (主語を強調)
I can’t do it. (動詞を強調)。
“t”が発音されていない場合でも、そこに間ができることに注目しましょう。英語では”Swallow the “t”、「tを飲み込んでいる」という言い方をしますが、その通り、tを飲み込むための間があります。こちらのビデオが参考になります。

WantとWon’tの聞き分けのコツ
この発音も、綴りは違っても発音はほとんど同じ。聞き分け方は、次に置かれる「品詞」に注意することです。
(A) I want some water. (水が欲しい。)
(B) I want to drink some water. (水が飲みたい。)
(A)の「欲しい」場合は、次に置かれるのは名詞です。
(B)の「飲みたい」では、次に ‟to+動詞“が置かれます。
(C) I won’t drink any water. (水は飲まない。)
「飲まない」では、次に置かれるのは動詞のみです。
Wantとwon’tの聞き取りは、以下を比較するとよくわかります。
(A) I want to do it. (それがやりたい。)
(B) I won’t do it. (それはやらない。)
Aでは「ウォントゥー」、と聞こえ、Bでは「ウォン(t) ドゥーイ(t)」と聞こえるでしょう。




「Wont’ do it」の聞き取りが難しい理由がもう一つ。英語では“t”と“d”が続いた場合、どちらか一方だけが発音される、という法則があります。日本人が期待しているように発音されないため、混乱を招きます。このような「音の変化」について興味のある方は、詳しく書かれているこちらの記事がおすすめです。
WorkとWalkの聞き分けのコツ
こちらも“a”の発音のバリエーションが英語では多く、聞きなれていない日本人が理解できない例の一つです。発音記号としては、以下のように記載されます。
発音記号 | 同音の単語 | |
---|---|---|
Work (働く) | wɜːk | Nurse, herb, third |
Walk (歩く) | wɔːk | Caught, law, more (UK) |
Workの/ɜ/は日本語にない音で、/ə/を潰したような音です。/ə/はカタカナの「エ」を、口を横に開かずに発音する短い音です。/ɜː/となると、長めに発音するという指示になります。
Walkはカタカナ発音に似ていますが、
- 「ウォーク」と発音せず「ウォーk」とkで切る
- 「-」と伸ばすよりも「オォ」とオを二重に発音するイメージ
を心掛けてみてください。




同様に発音される単語を見てお分かりのように、それぞれの発音に様々な綴りがあります。/ɜː/の発音は一般的に-er, -ur, -irで綴られる単語、/ɔː/は-augh, -aw, oです。
私はworkを発音できるようになるまで5年ほどかかりました。「一日中働いていたよ」と言ったら「そんなに長い時間、どこ歩いてたの?」と返される屈辱に耐え凌いだ日々でした。

An(冠詞)とUn-(名詞の接頭詞)の聞き間違え
最後に、私が実際に聞き間違えてしまった例を紹介致します。
「それについては当社の公式の資料がありますので共有します」と話者が言ったのを、
「それについては当社の非公式の資料がありますので共有します」と誤訳してしまいました。
その違いは、
公式の資料: We have an official document.
非公式の資料:We have an unofficial document.
「非公式」であれば、「アン・アンオフィシャル」でなければいけなかったのに、「アンオフィシャル」と聞いてしまったことが問題でした。
母音で始まる単語の冠詞はanとなり、un- と名詞の意味を反対にする単語があることにも気を付けましょう!
まとめ
ここでご紹介した全ての例に共通して、「日本語にはない音素が使われている」こと、または日本語にない文法が使われていました。この知識を付けるだけでもリスニングが上達するはずです。また、自分が発音できるようになると人の発音もよく聞き分けられるようになりますので、ビデオなどを参考に音素の発音の自習をすることを心掛けてください。聞き取れなかったり、聞き取って貰えなかったりすると心が折れることもありますが、めげずに続けて、英語を自分の言葉として話す夢を達成しましょう。応援しています!

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日本人は全ての単語を同じボリュームで話してしまい、ネイティブにとっては聞いていても話の要点がわからない、という特性がありますので、これも留意したいポイントです。
“I didn’t say you stole my money!” (私はあなたがお金を盗んだなんて言ってません!)
この文章も、どの単語を強調するかによって「自分じゃなくて他の誰かが言った」(Iを強調)、「あなたではなく他の人が盗んだ」(youを強調)、「お金じゃなくて他のものを盗んだ」(my moneyを強調)と、様々な意味を含むことができます。