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2004年にノーベル平和賞を受賞したケニアのワンガリ・マータイさんは日本の「もったいない」という日本の考えに感銘を受けました。その後、地球環境に優しい生活スタイルとしてMOTTAINAIと日本語の言葉をそのまま使って、世界に「ものを大切にする」気持ちを伝える活動を続けました。(MOTTAINAI 毎日新聞社)
このように、英語に直訳することができない日本語の表現はいくつもあります。それは、その行動や現象自体が日本特有の文化を表しており、他の言語に置き換えることができないからです。
最もよく使われる「ビジネス挨拶」は訳せない
「お疲れ様です」、「よろしくお願いします」、「すみません」。何とこれ全部、英語に訳すことができません。例えば「お疲れ様です」を直訳すると「You are tired. (あなたは疲れている)」でしょうか? それでは、意図するものと全く違いますよね。そもそも、何を意図するためにその言葉を言っているのか? を考える必要があります。自動運転状態で口をついてしまうこの言葉、一体どういう意味で言っているのか「心の声」を聞きながら、英語訳を見つけましょう。
「お疲れ様です」
仕事関係の人であれば開口一番「お疲れ様です」というのが礼儀という所がありますが、あまり意味を考えず「とりあえず言っている」となりがちです。初心に戻り、何を言いたいのかを考えると挨拶以外の何ものでもありません。
➀「(その日初めて顔を合わせたので、反射的に言いたくなる)」
How are you today?
➁「(仕事から戻って来たのを確認したので、反射的に言いたくなる)」
How did it go?
③「(ビジネスコールで開口一番、反射的に言いたくなる)」
Hi/Hello. How are you doing?
“Hi” はいつでもどこでも使える言葉です。朝の挨拶でも、トイレで顔を合わせた時も、ちょっと質問したい時も。一般的には誰にでも使えますが、特別礼儀を気にしないといけない相手の場合は、good morning/afternoon/eveningに変える、相手の名前を最後につける、または名前を呼んで注意を引くのがお勧めです。
その後に”how are you doing?” と相手を気遣う言葉で会話のきっかけづくり、または”how did it go?” 「うまく行った?」で状況の確認などをできると良いですね。
「よろしくお願いします」
通訳キラーのこの言葉。「よろしくお願いします」が使われたシチュエーションによって話者の心の声に耳を澄ませて素早く対訳を考えます。それまでに話された内容を加味してアレンジする場合もありますが(うまくいけば!)、大抵は以下のバリエーションを利用します。
➀「この仕事をしてくれて助かるなぁ」
Thank you for taking up this job.
➁「お願いですからしっかりやってくださいね!」
I trust you will deliver and meet our expectation.
③「任せましたよ。」
Let me know if there is any issues.
④「これから一緒に頑張って仕事していきましょう」
I’m excited to work with you.
I look forward to working with you.
➀の例は割とシンプルに、感謝の気持ちを表しているので訳すのは簡単です。では、上の立場の人が意味深長に「よろしくお願いします」と言った時は…? ➁の意味で、このような改まった表現で緊張感を持たせます。話者とそれを受ける外国人の関係性が近く、パートナーとして仕事を進めているようなら③を使います。「任せた」とは言っても問題があっても何もしないわけではないので、「何かあったら言ってくださいね(それまでは任せましたよ)」となるわけです。
「すみません」
日本人はすぐに謝る!とよく言われますが、謝っているのではなく、口癖のようなものです。これも自分の自動運転にストップをかけて、どういう意味で「すみません」を言っているのかを考え、言語化して英訳を見つけましょう。
➀「今、話しかけて大丈夫かな~?」
Hi (名前), can I disturb you? (お邪魔してもいいですか?)
Can I have your 2 minutes? (2分もらってもいいですか?)
➁「~してしまって、申し訳ない事をしたなぁ。」
I’m sorry for -ing.
③「店員さん、こっち気が付いて~!」
Hello!
④「こんな事したら失礼かもしれないけど、えぃっ!」
Excuse me.
「すみません」=Excuse meと記憶している方も多いのではないでしょうか。基本的には④のような意味で使われ、他人行儀な印象を与えます。また、言い方によっては「ちょっと!」という失礼にも当たりますので、言い方に気を付けて下さいね。
日本語でよく使う表現を英語で言い換え
上記の例で、日本語を英語的に考えるコツが見えてきたのではないでしょうか?
それでは次に、ミーティングやビジネスメールで使われる定型的表現をいくつか学んでいきましょう。左側に日本語を書きますので、右側を隠して自分なりの訳を考え、その答え合わせとして後から英語を見る、という使い方をお勧めします。
日本語 | 英語 | |
---|---|---|
1 | 貴重なお時間ありがとうございます。 | Thank you for your time |
2 | お体ご自愛ください。 | Please take care of yourself. |
3 | お世話になっております。 | I trust you are well. |
4 | ご確認のほどよろしくお願いいたします。 | Please kindly confirm |
5 | お時間がある時で結構ですので | at your convenience |
6 | できるだけ早く | at your earliest convenience |
7 | お休みをいただけると幸いです。 | We are closing the business |
8 | ご迷惑おかけしすみません。 | We aplogise for your inconvenience. |
9 | お手数をおかけしますが。 | We aplogise for your inconvenience. |
10 | お忙しいところ恐れ入ります。 | We appreciate for accommodating your busy schedule. |
11 | 社内で検討します。 | We will discuss internally. |
12 | 持ち帰らせてください | We will get back to you on this. |
13 | 添付ご確認ください。 | Please find the attached |
14 | お返事お待ちしております。 | We look forward hearing from you. |
15 | 先日話合った通り、 | As we discussed, |
「英語的な考え」のヒントになるところをハイライトします。2については英語にするとカジュアルな印象になります。「季節の変わり目ですので」や「お忙しい中」というような一歩踏み込んだ表現を加えられると百点です。
3は直訳するとThank you for looking after me. こんな変な表現はありませんので使わないでくださいね。Thank you for your support/coorporation なども使えないことはありませんが、どちらかと言うと文末に結びとして使うイメージです。
7については、相手に許可を求めていないのであれば「お休みします」とシンプルに伝えるのが正解です。
日本語でそのまま通じる英語表現
IKIGAI
“I will also look for my Ikigai.”
この言葉は2017年にHéctor GarcíaとFrancesc Mirallesによって書かれた本によって一躍有名になりました!日本の長寿の秘密は「生きがい」にあるという真実を探る調査のまとめ。日本語でも出版されています。
UMAMI
“There is umami in this Ramen soup.”
「うま味」は1908年、東京帝国大学理科大学の教授、池田菊苗博士が、昆布出汁に含まれるL-グルタミン酸塩の特徴的な呈味を発見、翌年発表した論文で「うま味」と命名したことからはじまります。英語にはうま味に該当する言葉がなかったため、1982年に発足したうま味研究会が”umami”を学術用語として使用することを改めて提唱しました。
出典:うま味について|Ajinomonto
ZEN
“She is so Zen, she never get angry or upset with anything.”
仏教用語である「禅」は、インドでは「Dhyāna」、中国では「Chán」そして日本では「Zen」と呼ばれます。今日、英語ではZenが名詞としてだけでなく動詞、形容詞としても使われます。
KARATE
“I will give you a karate kick if you are late again.”
KARATE=日本というイメージは未だに強く、「日本人は全員空手マスターなのか」「授業で空手を習っていたか」という質問を受けます。なのでこのセンテンスを使うと受けること間違いなしです!
KAIZEN
We have to KAIZEN this process to improve efficiency.
改善はimprovementと訳すことができ、もちろん英語文化に改善は存在します。しかしトヨタの生産方式のコンセプトとして非常に有名なため、1990年にオクスフォード・ディクショナリーに正式に紹介されました。
まとめ
日本語はもともと英語から遠いファミリーに位置する言語ですので、語順も違いますし単語も全然違います。しかしそれだけでなく、文化や習慣、美徳とするものが違うために、習得するのが難しい言語だと再確認しました。自然な表現が何というかわからなくても、自分の言葉で思いを伝えて、私たち特有の美しい文化や習慣も人に伝えて行きましょう。
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④については仕事を一緒に始める時。Excite (興奮している)、Look forward to (楽しみにしている)、のような、日本のビジネスの場面ではあまり使わない表現をします。ここから逆に英語文化のマインドセットが垣間見えますね。英語社会では「礼儀正しい」よりも「ポジティブ、エネルギッシュ (英語ではenergetic /ɛnəˈdʒɛtɪk/) 」がビジネスマンとして良い印象を与えますよ。